ローテンブルクは、ドイツ中世の街並みや大小様々な古城が連なっている『ロマンティック街道』沿いの代表的な小都市で、城壁に囲まれた市街の街並みがまさに中世ドイツのままの景観である事から『中世の宝石箱』とも称されているようです。
宿泊した小ぢんまりしたホテルの目の前が、その中世的街並みの代表的景観としてガイドブックなどにもよく出ているようなロケーションでした。
到着後、夕食までの時間、この城壁内のメルヘン的な街中をゆっくり散策しました。街の中心にあるマルクト広場に面する市庁舎の壁面にある仕掛け時計は、毎時ちょうどに、遥か遠い昔の17世紀の三十年戦争当時の戦中のエピソードが再現されています。
神聖ローマ帝国の皇帝軍に攻められた時の、皇帝軍将軍と町の市長との間であったとされるやり取りを人形仕掛けで再現されるのを見物しました。
この日の夕食は、お肉やソーセージではなく、このツアー初めての魚料理で、地元のフランケンワインとともに美味しくいただきました。
夕食後は、22時頃までは日が落ちない明るさの中、さらに市内散策に。実際に歩いてみると、この町が本当に堅固な石造りの円形の外壁で囲まれている事を実感します。
そして、その円形の外壁には6つの狭い門が作られていて、外から攻め込んで来る敵軍に備えていた事が分かります。各門の側には、外壁の上に上がる階段が付いており、外壁上の通路があります。外側に向かって所々に開いた小さな小窓から街の外の外敵を攻撃し、街を防御した戦いの様子が思い浮かびます。
ワインのほろ酔い加減での散策を終え、この日は休みました。
次の日は、早朝から出発して、一転、大都会フランクフルトに向かいます。ツアー最終日は、このドイツの代表的経済都市で一日自由行動です。
フランクフルト旧市街の中心であるレーマー広場から、マイン川河畔まで。
また、街の中心であるハウプトヴァッへに向かい、ブランドショップなどをウインドウショッピング。
その後、近くのゲーテハウス(文豪ゲーテの生家、記念館)を訪問。
うろうろしていると、ゲーテの像の直ぐ近くに、大きなグーテンベルグの像がある事に気がつきました。
ゲーテは、ドイツ文学史上でも比類無き大作家ですから、その銅像があるのは当然かと思いました。しかし、印刷術の発明をしたと言うだけのグーテンベルグが何故こんな大肖像で讃えられているのか、やや不思議な感じがしました。(探してみればあるのかもしれませんが、現代文明の基礎となるような数々の発明をしたとはいえ、エジソンの銅像があるようには思えません。)
ツアー前にドイツ史について簡単に調べた中に、ヨーロッパ中世期末期に激しい戦乱が続いたのは、宗教改革に端を発したプロテスタントとカトリックの新旧の宗派の対立が基本的原因であったとされています。その論争のノロシを上げたルターがそれまでのようにローマ教会の権力によって潰されてしまわなかった大きな原因がグーテンベルグの印刷術の発明にあるようです。つまり、そのルターの主張が、印刷術の発明によって短期間に伝播され、またキリスト教の基本的経典である『聖書』が教会の占有物でなくなり、多くの人々が直接読めるようになったからである、と言う解説を読みました。その意味で、グーテンベルグの発明は単なる技術的問題で止まらない宗教・政治・歴史的変革を支えた情報流通革命だったのだろうと思いました。
これは、現代の情報通信技術の革命が及ぼした現代社会への経済的社会的影響を博士課程の基本的テーマとしている私には、一つの示唆を与えてくれる問題だと思い当たりました。
短い日数でしたが、人口も面積も我が国より少ないのに、いつの間にか、GDPで世界第3位に躍進して来たドイツの中世の名所旧跡から現代都市までの様々な顔を見聞した楽しいツアーでした。