ブリュッセルのアパートメントホテル

今夏のホテル騒動の原因の一つは、実は、私自身がヨーロッパでのホテルの形態について充分理解せずに、利便性や料金等についてのネット上の情報のみで安易に選択した事もあります。

ネット予約出来るホテルには大きく分けて2つのタイプがあります。一つは、日本でも普通のタイプの玄関を入った所に、フロントのカウンターがあり、そこに受付スタッフが常駐しており、チェックイン、チェックアウトを含め様々な対応をするタイプのホテルです。最初にハーグで泊まったホテルはこのタイプのごく普通のホテルでした。もちろん何泊しても、キチンと毎日、部屋の清掃やシーツ、タオル、ミネラルウォーター等の交換もしてくれます。ただし、このタイプのホテルは基本的に旅行者が一時的に利用するもので、生活スペースではないので、キッチンや電子レンジ、食器等は付いていません。

一方で、日本では私自身は利用した経験は無いのですが、旅行者と言うより滞在者としての利用を前提にして、キッチン、電子レンジ、トースター等の調理器具や食器、洗濯機等を完備した部屋をある程度の期間貸し出すタイプの『アパートメントホテル』があります。
私自身、今回の旅で、それほど深く考えず、自分の経験の中ではやや長期になる滞在を予定し、出来れば地元のスーパー等で食材を買って自炊の真似事のような事もしてみたいと漠然と考えていました。それで、単にキッチン付きと言う点にのみ目を付けてブリュッセル、パリのホテルを選びました。
ところが、こう言うアパートメントホテルは、言わば部屋を丸ごと貸すからそれを使って自由に滞在して下さい、という形で、一般のホテルのようなフロントも無く、常駐しているスタッフもおらず、部屋の清掃もリネン取替えサービスもありません。一番大きな問題は、スタッフの常駐が無く、部屋の案内も鍵の受け渡しも、極力人手を使わないようなシステムになっている事です。その辺りを私は全く理解していなかったのですが、私がブリュッセルとパリで取ったホテルはこのタイプでした。そして、鍵の受け渡しも、ちょうど共働き家庭の学童のように、自分で解錠して部屋に入る形であり、このブリュッセルもパリも入り口には何重ものセキュリティロックがあり、そのパス番号がメールで送られて来る形だったのです。

そんな基本的な知識すら無く、このタイプのアパートメントホテルを初めて利用した私が、ブリュッセルで面喰らったのも当然でした。

もう一つ、このタイプのアパートメントホテルでは、常駐のスタッフが居らず、部屋の管理は利用者に任せられている形のため、部屋の家具類その他の管理保証のため、宿泊料の他にデポジット(保証金)を仮払いし、チェックアウト後、問題が無ければそのデポジットが返金されると言うシステムが一般的なようです。そのようなヨーロッパのホテルに関する基本的な知識・理解が無く、このアパートメントホテルを利用した事が、今回の騒動の元々の原因であり、言わば、私の一人芝居だった面もあったようです。

いずれにしても、慌ててデポジットを支払った後、部屋のチェックインについての詳細な長いメールが届きました。その概要は以下の通りです。
Hello Matsuga,   We look forward to welcoming you to Maison Grand Place soon! Below you will find all the important information for a comfortable arrival and stay.  The exact address is Rue Chair & Pain 5, 1000 Brussels . 
The apartment is located on the 1st floor and can be easily identified by the number 4 sign located outside the apartment.
 Check-IN process: 
 For your convenience, we have implemented a self check-in system with a code:
– The Main door of the building is opened with a code: 627384
(use the small buttons on the black door entry keypad located to the left of the building’s entrance door).
– To get to your apartment follow the directions with the sign “Apartments 4, 5 & 6”. This path goes through a cafeteria area and we kindly ask you not to trespass the demarked zones to avoid the alarm going off.
– You will find the apartment key in a lock box next to the apartment door
With the code “1 1 3 7″, open the lock box
Once you have retrieved the keys, close the lock box so that the code is not visible anymore

一応、翻訳しておくと
「こんにちは、マツガさん!もうすぐメゾン・グラン・プレースにお迎えできるのを楽しみにしています。以下は、快適な到着と滞在のための重要な情報です。
正確な住所は、Rue Chair & Pain 5, 1000 Brussels 。
アパートは1階にあり、アパートの外にある4番の看板が目印です。
チェックイン方法
お客様の利便性を考え、コードによるセルフチェックインシステムを導入しています。
– 建物のメインドアは、コードによって開かれます。627384
(建物入口ドアの左側にある黒いドアエントリーキーパッドの小さなボタンを使用します)。
– アパートメント4,5,6 “のサインを頼りにアパートメントへ向かいます。この道はカフェテリアエリアを通っていますが、アラームが鳴るのを防ぐため、マーキングされたゾーンに立ち入らないようお願いします。
– アパートの鍵は、アパートのドアの横にあるロックボックスの中にあります。
「1 1 3 7」の暗証番号で、ロックボックスを開けてください。
鍵を取り出したら、ロックボックスを閉じて、コードが見えなくなるようにします。」

しかし、このようなチェックインが初めての経験である私には、これはまるで探偵小説の秘密司令の如く思えました。そして、実際に、その指示に従って暗い建物の中の迷路のような通路を辿って行くと、ついに宿泊する部屋に辿り着きました。

そして、その部屋に入り、正面の窓から外を見ると、何と私が困惑しながら走り回った正にその観光名所のグランプラスの見事な建物群が目に飛び込んで来ました。

つまり、私が最初に困惑した住所の表示は間違っておらず、ただその建物の1階ではなく、2階こそがそのアパートメントホテルの部屋だったのです。

そして、この部屋には、私の望み通り、ちゃんと独立した食器・調理器具付きのキッチンのみならず、独立した別スペースの洗面バストイレ室もありました。

最初は狐につままれたかのように困惑し、詐欺に遭ったのかとさえ疑った状況から、この部屋に辿り着いて本当に心の底から安堵したのでした。

この日の夕食は、このホテルの入り口にあり、その関係者らしきオジさんがわざわざ案内のために来てくれたレストランにて、お礼を兼ねて、ブリュッセル初の本格的な食事をしました。

そして、食事が終わった頃には、グランプラスの建物群は見事なライトアップがされていました。

食事を終えて、ホテルの部屋に戻った頃にはライトアップのカラーが変わっていました。

それにしても考えてみると、スゴいロケーションの部屋に泊まったものだと改めて思います。

投稿者:

matsuga_senior

《松賀正考》大阪大学外国語学部英語学科、歯学部卒業。明石市で松賀歯科開業。現シニア院長。 兵庫県立大学大学院会計研究科を卒業し会計専門修士。さらに同大大学院経済学研究科修士課程を卒業。その修士論文で国際公共経済学会の優秀論文賞を受賞。現在、博士課程在学中。