ちょうど20年前の2001年9月11日、ニューヨークのワールドトレーディングセンター(WTC)のツインタワービルにテロ犯によって乗っ取られた航空機が突っ込み、この2棟の超高層ビルが崩壊し多数の死傷者が出る大惨事になった事は、もはや歴史に記録される21世紀初頭の大事件でした。
ところが、何の因果か、ちょうどこの時期に私はニューヨークに滞在しており、この大惨事となったWTCビルのすぐそばに居て、この事件を間近で目撃することになったのです。この時のツアーでは、カナダのトロントのナイアガラ瀑布の見学を経て、前日ニューヨークに入り、初のニューヨーク観光としてエンパイア・ステート・ビルからこのツインタワーを眺めたまさにその翌日でした。この11日の朝、ニューヨーク都心のタイムズスクエアのホテルで宿泊していましたが、初の米大陸東部までの長旅での疲れもあったのか、約1時間ほど朝寝坊をしてしまいました。この日は、ニューヨーク南部の『自由の女神像』のあるスタッテン島の観光に行く予定をしており、その島へ渡るフェリーのチケットを買いに、まさにこのWTCビルに行く予定でした。
それほどタイトなスケジュールを組んでいたわけではないので、朝寝坊したぼんやりした頭で、地下鉄に乗り込みました。ところがこの地下鉄が突然途中で停止してしまいました。事情が分からず困惑していると、列車のアナウンスの中に爆発を意味するらしいBombという言葉が混じっていることに気がつき、不安な気持ちのまま列車を降り、とりあえず地上に出ました。すると目の前で大きなビルが黒煙を上げて燃え上がっています。これは大きなビル火災だなぁ、と思いつつ群衆の中で呆然と見ていると、周囲には、けたたましい救急車やパトカーのサイレンが鳴り響き騒然たる空気です。事情が分からないまま、手に持っていたビデオカメラを燃え上がっているビルに向けました。その時の記録動画はいくつかの記憶媒体を経て、私のスマホの中に眠っていました。ある意味、ささやかながらも一つの歴史の記録とも言える動画かと思い、YouTube投稿を始めた機会に簡単な編集をしてアップしてみることにしました。
後で振り返って思うと、もしこの朝、朝寝坊せずに、数十分早く起きて行動開始していれば、私はこのツインタワーに向かい、おそらくあの大惨事に巻き込まれ、崩壊したビルの瓦礫の中に埋まっていたかもしれません。考えてみれば、人生の幸不幸の綾ほど不思議なものはありません。幸い難を逃れ、今日生き長らえている事を思えば、現在の人生の日々を大切に生きなければと改めて思うところです。
そしてまた、もし個人が動画記録を簡単に公開できるYouTubeというシステムが無ければ、この小さな記録動画も、私のスマホの記憶装置の中に眠って、人の目に触れることも無かっただろうと思うと、新しい技術やシステムが人間や社会に及ぼす影響について、また別の感慨を覚えます。