Marketing Report3( KOBE Brand )

<「神戸」の都市ブランドイメージと今後の戦略 >

  神戸は、種々の条件が重なり日本の各地の都市の中でも非常に優れた都市ブランドを形成していると思われる。日本の諸都市のうち、圧倒的な経済規模と首都としての機能・権限が集中し世界的メトロポリタンとなっている東京や世界的にも希有な長い歴史を持つ京都は別格として、神戸は、経済規模では、大阪、名古屋、福岡等の各地域の中心都市の後塵を拝し、都市として開かれてからも高々明治以降の百数十年の歴史しか持たない。

しかし明治の開港以来、船舶輸送が中心だった時代、欧米等の先進国との国際交流の窓口として華やかな都市イメージを身に付け始め、旧居留地や北野の異人館街の洋風建築群や西洋料理や洋菓子、洋風ファッション等とともに『ハイカラ』、『おしゃれ』のブランドイメージを獲得した。

地理的条件でも、瀬戸内海に面した穏やかな気候のもとで、神戸港と六甲山系に挟まれた坂道の多い街並みが独特の雰囲気を生み出している。さらに高度成長時代後期、都市経営の独特の手腕を発揮した市長のもとで〈山、海へ行く〉のキャッチフレーズで、西神等の郊外団地の造成とポートアイランドや六甲アイランドを埋め立て造成した都市開発手法はポートピア博などで新しい都市イメージの情報発信となった。阪神大震災の甚大な被害にもかかわらず、それをきっかけにしたルミナリエや、(サンバに違和感がなくもないが)神戸祭りなどのイベント企画も観光資源として、一定の成功を収めている。

また、港町としてのイメージから、どうしても、六甲から南の地域がイメージの中心となっているが、神戸市域の半分は六甲の北側に広がっており、港町神戸となる遥か昔からの長い歴史を持つ有馬温泉や豊かな自然を生かしたフルーツ・フラワー・パークやワインを自家醸造している農業公園など、神戸の都心部とは全く違うイメージを持つ豊かな自然を背景にした農産畜産物もある。今や世界的なブラントとなっている『コーベ・ビーフ』もまた、神戸ブランドの一つである。

これらを総合して、神戸は、その特色を十分活かして、都市ブランド作りに成功していると言えるのではないだろうか。

今後の都市ブランド構築への取り組みについては過去の『歴史』を新たに作ることは出来ない。現在から未来への取り組みをするしかない。その点で注目出来る事業の一つとして、ポートアイランドを先進的医療の研究やIT分野の最先端技術の拠点として、各方面の研究施設を集積させる『医療産業都市構想』という開発企画が進められているのは、注目に値すると思われる。

これらの分野で、もし、世界的なレベルでの新しい成果が生まれれば、それは神戸に新しい要素のブランドを付け加える事になるだろう。我が兵庫県立大学でも神戸情報科学キャンパスが設置され、隣接する施設内のスーパーコンピュータを利用しての研究が進められていると聞く。このような分野での研究の取り組みが新しい成果を生み出せば、それは神戸の新しいブランド価値を生み出す事にもつながるものであり、その進展を期待したい。

投稿者:

matsuga_senior

《松賀正考》大阪大学外国語学部英語学科、歯学部卒業。明石市で松賀歯科開業。現シニア院長。 兵庫県立大学大学院会計研究科を卒業し会計専門修士。さらに同大大学院経済学研究科修士課程を卒業。その修士論文で国際公共経済学会の優秀論文賞を受賞。現在、博士課程在学中。