人間は、それなりの能力があり必要な努力を続ければ、この社会で生きていけます。しかし、その人生を言わば「裏打ち」し、その日々の経験を深く味わい、言わば、生きている事を実感させてくれるのは、「共感」であり、その広がりと深さである、と今、私は思います。
現在、私は生活をする上での利便性では申し分の無い都心のマンションで暮らしています。有り難い事に、当面の暮らしに必要な経済的心配はありません。私が、人生の前半の時間とエネルギーを傾けた小さな診療所は、どうにか次世代が引き継いでくれそうです。
そんな状況の私が、この春、突然大学院で学び始めようとしたのは、何故なのか、自分でもナゾの部分はあります。一つには、自分の中の好奇心として、何か新しいことを学びたい、と言う気持ちがスタートだったのは事実です。学生生活に戻る事で、心身ともに、生活が規則正しくなり、健康的になるだろうという言わば実利的側面も考えたと思います。
しかし、もう一つ、ほとんど無意識に、半ば本能的に(私が自己紹介の使う常套句で言う「大学の中の最年長の学生」としてであれ)正規の学生として「学びたい」と思ったのは、そう言う「共感」の厚みと広がりを期待していたのではないかと思います。そして、その期待は裏切られませんでした。人と向かいあって、一方的に人に何かを求めるのではなく、「学ぶ」と言う目的を共にする多くの仲間たちと知り合い、ある意味、苦楽を共にする事で、私の生活の中での「共感」は、厚みと広がりを持ったと思います。新「1年生」として、私は「友だち100人、できた」と思います。その事は、私の生活に心の豊かさと充実感をもたらしてくれました。
その意味で、私の思い切った決断は、間違っていなかったと思いますし、これからも、この方向性を大切にして日々を過ごしたいと思います。つまり、私はここまでに書いたような意味で「ヒト持ち」になれるように努めたいと思います。
現在の日本の状況の中で、もっともっと、と求めるモノは、最早意味を失っていると言うべきでしょう。我々が求めるべきは、豊かで拡がりのある「共感」を持てるヒトとの繋がりであり、私はそのような「ヒト持ち」になりたいと思います。
一年の最後に、この投稿をまとめ、読み直してみて、これが、今年の一年をかけて取り組んできた私の新しい挑戦の総括になったように思います。それだけに長々とした長文になってしまいました。最後まで、この長文にお付き合い頂いた読者の方には、心より感謝申し上げます。
(おまけ)
この投稿を大学院の冬休み期間を利用してのニュージーランドへの飛行機の中で編集しています。このツアーも、普通のパッケージされた観光旅行ではなく、現地の家庭にホームステイし、半日程度、英語研修の学校に通う形を選びました。
普通のパックされた観光旅行よりも「共感」を持てる機会が多いと思ったからです。
海外でも、新しい「ヒト」との繋がりを持てるチャンスにしたいと思っています。
(おまけのおまけ)
この長文の投稿の最後に、どうしても付け加えておきたいことがあります。それは、今や時代の最新の話題として盛り上がっているSNSの言わば「時代的」役割についてです。
これまた長文の連続投稿となった「小動物の群れがマンモスを倒した日」に詳しく書いたように、私は現役開業医時代、県の歯科医師会の役員として取り組んだ大きな課題の一つが、ネット上の情報連絡システムでした。そのシステムの導入提唱者として、長年その普及推進の旗振り役として活動してきた立場もあってか、新しくネット社会の、と言うより一般的社会の最大の話題の一つとなつているSNSには、今一つ目が向きませんでした。
しかし偶々、前稿の「懐かしい面々との久しぶりの再会」で書いたOB会のメンバーの一人が、LINEやInstagram の熱心なユーザーだったことから、非常に優しい手ほどきと、まさにSNSの優良サンプルのようなやり取りを始めたことで、遅ればせながら、SNSの世界にすっかりハマることになりました。
これもまた、今年の私の新しい挑戦の一つと言えると思いますが、この投稿をまとめていて、SNSがまさに人と人の「共感」の繋がりを産む新しい強力なツールである事に気づきました。日々を過ごして、その生活で起きたこと、感じたこと、経験したことを気軽に共有してもらい、言葉だけではなく、画像や時には動画で報告し合い、反応をもらい、「共感」を拡げてゆく。それがまさにSNSの本質であり、その機能と役割は、現代の時代的課題に応えるものではないかと思います。
その導入の手ほどきの間、私は、まるで小学生の頃、学校生活の中で起きたあれこれの事を母親に報告し、承認や共感やねぎらいをもらったように、「それは良かったですね」、「大変でしたね」、「頑張って下さいね」と言う反応をもらって、なぜかほっとし、気持ちの落ち着きを感じ、生活に厚みと充実感を感じる経験となりました。それぞれが自分の課題を抱えて多忙な日々を送っている中で、ネットという新しい道具を使う事で、気軽に「共感」の繋がりを持てるということは、私には新鮮な驚きの体験でした。数ヶ月にわたりきめ細やかなお世話と対応を頂いたMさんには、心からの感謝とお礼を申し上げたいと思います。また、来たる新年にも引き続き、よろしくお願いいたします。